安定同位体分析で海洋中の物理的･化学的･生物学的プロセスを追跡する

海洋学は、海洋で発生する物理的、化学的、生物学的なさまざまなプロセスに関連する非常に多様な学問領域を網羅します。そして安定同位体分析は、これらのプロセスを現代と古代の両方について追跡するための強力な研究手法となります。 古海洋学は、氷床コアや深海底堆積物に保存されている物質の酸素安定同位体特性を利用して、海面や深海の水温の履歴を解明することができます。 また酸素と水素の安定同位体分析は、水の動きや循環、蒸発過程、および局所的、地域的、または地球規模での気象への影響を追跡することで海洋水の水文学に役立ちます。

安定同位体分析は、海洋の栄養循環や生態系にも興味が及びます。炭素、窒素、硫黄の安定同位体は、藻類の活動を追跡し、海面もしくは深海底にある生態系の食物連鎖構造を解明し、季節を通じて栄養素の流れを追跡できる強力な研究用ツールとなります。特に深海熱水系という非常に過酷な条件下で化学合成生物が生息している未開拓分野の探索に有用です。