安定同位体法医学

法医学的調査で常に問われるのは、「調査された試料がどこで採取されたものなのか」ということです。ここで役立つのが安定同位体分析です。なぜならば、安定同位体分析は、未知試料の起源に関する独自の知見をもたらすからです。有機軽元素の安定同位体の相対アバンダンスのごくわずかな変化を調べることにより、試料の起源と履歴に関する情報を明らかにすることができる、ユニークで隠れた特徴を発見できます。すなわち、安定同位体分析を多数の法医学的アプローチに適用することで、独特で強力な鑑識能力の広がりが得られます。

今日、安定同位体法医学は科学捜査で認められた分析ツールであり、幅広いアプリケーションで使用されています。安定同位体法医学は、化学的に類似した物質 (薬物、爆発物、繊維など) が共通の起源と履歴を有しているかどうかを判定したり、偽造品 (医薬品、食品、フレーバーなど) を本物と区別するために使用されます。また、象牙のような動物組織の出所を特定し、身元不明の遺体が見つかった場合にその遺体を調査したり、アスリートが運動能力を向上させる薬物を使用したかどうかを判定します。