医学・生化学分野における安定同位体分析
ヒトや動物の様々な生理機能を制御する生物学的プロセスを理解することは、医学および生化学の研究を行う上で重要な役割を果たします。これらの研究領域では、体内の生化学反応や代謝経路に関する情報を得るために、非侵襲的ラベル化技術を用いる安定同位体分析を利用します(例:呼気分析)。微量同位体の人工的に高いアバンダンスを有する濃縮した同位体トレーサーを使用することで、本来補足しにくい生体内作用も簡単に調べることができます。
呼気分析
呼気分析に安定同位体分析を用いることで、生体が産生するCO2を非侵襲的に測定することができます。被験者が同位体標識した食事を摂取すると (例:13C標識グルコース)、呼気分析の結果は被験者が吐き出すCO2の12Cに対する13Cの割合が非常に高いことを示します。13C同位元素が呼気中に出現するまでにかかる時間は被験者の新陳代謝率をある程度示すことが分っています。当社のiso FLOWサンプル処理システムは最大220個の呼気サンプルをハンドリングすることができるので、多数のサンプルを迅速に分析することができます。
生体液分析
二重標識水 (重水素と18Oの濃度が濃縮されて通常よりも高い水) を被験体 (人または動物) に投与し、身体活動量の高い被験体ほど酸素を多く使うために生体液中の18C濃度が速く薄くなることから、被験体の総エネルギー消費量 (Total Energy Expenditure) が測定できます。当社のiso FLOWサンプル処理システムは最大180個のサンプル処理能力を備えており、サンプルバイアル内に採取した液体サンプル上部の平衡化したヘッドスペースに含まれる重水素と18Cを測定することで唾液、血液、尿の同位体分析が行えます。
生化学分析
生体内で起こる複雑な生理プロセスや生化学プロセスについてより深く理解をするためには、呼気分析や生体液分析といった粗分析を超える必要があります。当社のガスクロマトグラフや液体クロマトグラフでサンプルを前処理するシステム (GC-IRMSとLC-IRMS) を用いれば、化合物種毎に安定同位体分析を行うことができるため、これらの複雑なプロセスについてより詳しい知見が得られます。