1516 年の「ビール純粋令」から始まったビールの歴史
ビール品質の生命線「タンパク質量」を極める|元素分析が担う、純粋令時代から続くビールの品質基準
ミュンヘンのオクトーバーフェストで注がれるビール その定番の風味の裏には
500年続く「ビールは大麦・ホップ・水のみから作られる」という驚くほどシンプルな規定「ビール純粋令」があります
ドイツのみならず世界中のビール醸造所では、この伝統をルーツとしたEBC 規格9.9.2という
国際的な規格に基づきタンパク質を分析する事で、今もビールの品質が守られています
世界中のビール醸造場では、当社の分析装置 rapid MAX N exceedをはじめとする窒素・タンパク質分析装置が活躍しています
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さて、ビールは何世紀にもわたり「飲料」としてだけでなく、「食品」としても知られてきました
なんと中世では、「栄養価が高くて水よりも雑菌が少ない」という理由から、子どもにもビールを飲ませていたそうです!
醸造直後のビールは非常に消化が良く、ほとんどアルコールが含まれていません
(アルコールは後工程の発酵中に生成されます)
このことから、数百年前までは、人々は酔うためではなく、「健康のため」にビールを飲んでいたということになります
なお、今も昔もほとんどのビールは、1516 年に制定されたドイツの「ビール純粋令」に則って製造されています
↓ ビールの歴史については、以下の年表をご覧ください ↓
紀元前11000 年頃
ラケフェット(イスラエル)の洞窟で、世界最古の醸造所が稼働していたと考えられています。
そして研究者によって発見されたのは2018 年のことです。

麦芽粉砕用ラケフェット乳鉢
出典 Dani Nadel, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
紀元前3400 ~ 2900 年
現存する最古のビールのレシピが証明しているように、中国ではこの時代、既にビールが醸造されていました。
900 年
アイルランドのアスローンにアイリッシュパブ「Sean's Bar」がオープン。今では、ヨーロッパ最古のパブとされています。

アイルランドのアスローンにあるショーンズ・バー
出典 Serge Ottaviani, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
1516 年4 月23 日
Dukes Wilhelm 4 世とLudwig 10 世は、インゴルシュタットでビールの生産を規制するバイエルン州の新しい法令「ミュンヘン純粋令」を発布しました。
今日のドイツ純粋令はこの法令に基づいており、ビールは大麦、ホップ、水のみで作られると規定しています。
なお、後に制定されたランツフート純粋令では、麦芽の添加が認められています。
この法令が制定されるまでは、販売する飲料からより多くの利益を得る目的で、悪徳業者がビールに砂糖などを加えることが一般的だったとされています。
1680 年
オランダの博物学者であり、17 ~18 世紀で最も重要な顕微鏡学者であったAntoni van Leeuwenhoekは、世界で初めて顕微鏡のような装置を発明し、酵母を生物として発見する基礎を築くことに成功しました。
1857 年
フランスの化学者Louis Pasteur(パスツール)は、酵母は生物であるか否かという20 年にわたる化学界の論争に終止符を打ちました。彼はこの論争に関して「生物なくして発酵なし」「すべての発酵は特定の種類の生物によって起こる」という有名な言葉を残しています。この発見により1857 年以降、酵母は生物であるというのが一般的な見解となり、近代的な醸造技術の出現に大きく貢献しました。
“生物なくして発酵なし”
“すべての発酵は特定の種類の生物によって起こる”ルイ・パスツール

出典 Paul Nadar, パブリックドメイン, via Wikimedia Commons
1883年11月12日
Emil Christian Hansen は、コペンハーゲンのカールスバーグ研究所で初めて酵母細胞の分離とそこから醸造用酵母の純粋培養に成功しました。この発見は醸造技術に根本的な革命をもたらしました。なぜなら、それまで世界中の醸造所で使用されていた酵母は、上面発酵酵母と下面発酵酵母および細菌の混合物だったからです。カールスバーグ研究所は酵母細胞の分離を発表して全世界に公開。1883 年以来、これによりさまざまな種類のビールを醸造できるようになりました。

デンマーク、コペンハーゲンのカールスバーグ研究所
出典 パブリックドメイン、ウィキメディア・コモンズ経由
1918年3月4日
ドイツ純粋令はバイエルン議会のある議事録で初めて言及されています。1516 年の法令に基づき、ビールに含まれるのはホップ、麦芽、酵母、水のみと規定されています。麦芽はモルティングの結果、つまり穀物を短時間発芽させて再び乾燥させたものでした。このプロセスにより、穀物の中でビール醸造に必要な酵素が形成・活性化されます。そのことから、1516 年当時は、麦芽は大麦からしか得られないと考えられていました。
1950年代
Reinheitsgebot(ドイツ純粋令)がバイエルン州以外でも広まりました。これは砂糖入りビールの輸入量の増加をめぐる多くの論争が原因だったとされています。
現在
ドイツにおけるビール醸造に関する法規制は、ドイツ純粋令ではなく1993 年に制定された暫定ビール税法であり、この法律にはビール原料の定義も含まれています。また、国際規格には、改良デュマ法によるタンパク質含量の測定に関するEBC 規格9.9.2 が含まれています。
現代の醸造所では最高の衛生基準に従ってビールを生産しています。また、醸造プロセスと原材料の処理を正確に制御・監視する機器が多く備わっています。例えばタンパク質量の定量で使用するエレメンターのrapid MAX N exceed などの分析機器です。ただし、醸造の原則は変わっておらず、ビールは今でもドイツ純粋法に従って醸造されます。
世界には推定10,000 ~ 15,000 ものビールブランドと約100 のビアスタイルがあると言われています。この10 年間でアメリカやイタリアなどの国々が追いついてきたとはいえ、ブランドの多様性に関しては依然としてドイツが最も豊富です。
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ビール醸造における品質と工程管理
窒素・タンパク質の分析は、ビール醸造所や麦芽製造所の検査室において、入荷した大麦や麦芽原料の毎日の検査および工程管理で欠かせない重要な分析業務のひとつです。これは、タンパク質含有量の把握が発酵プロセスやアルコールの生成にとって非常に重要だからです。さらに、タンパク質の量はビールの泡立ちや泡の安定性といった品質評価にも役立っています。
原料および製品の窒素・タンパク質分析についての詳細は、当社のアプリケーション情報をご参照ください。
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