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消費者にとっては「食」の安全の証 ゆらぐ食品の原産地表示の信頼性...

Different sorts of sushi in close up
6 分

食品の原産地分析 日本と欧州の消費者にとって、品質、安全性、透明性の証となる食品表示

原産地を “見える化” する──IRMSによる科学的な信頼の可視化

 

“国産”や“○○産”の一言が、消費者の購買行動を左右する時代
だからこそ、原産地表示には科学的な裏付けが求められています

 

ElementarのIRMS技術は、地理的情報を、同位体比から読み解くことで、食品の真正性を確かなデータで証明します

 

 

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日本は先進国の中で食料自給率が最も低い国のひとつです。


国内生産で賄えるカロリーはわずか38% に過ぎず、輸入に大きく依存しています。
しかしながら、この状況にもかかわらず、安全で高品質とされる国産食品に対する消費者の需要が高いことも日本の特徴です。
つまり日本では国産の食品であればより高く売ることができることを意味しており、このことが最近、不純物混入や不当表示の増加につながっていると考えられます。
農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)では、同位体比質量分析法(IRMS)を用いて、食品の真正性と原産地を評価し、食品詐欺の防止に努めています。

 

その専門家である鈴木彌生子博士は以下のように語ります


食品表示は消費者にとって最も重要な情報源のひとつです。
世界中から輸入されたさまざまな食品を購入することができるようになった今、消費者が食品を購入する際に、その食品が日本国内で生産されたものなのか、
あるいは輸入されたものなのかを知った上で選択できるように
正しい情報を提供する必要があります

 

 

鈴木 彌生子 博士
↓ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(NARO) ↓
基盤技術研究本部 高度分析研究センター
生理活性物質分析ユニット 上級研究員

Dr. Yaeko Suzuki pipetting samples
Dr. Yaeko Suzuki from the National Agriculture and Food Research Organization (NARO) in Japan

最高水準へのこだわり

日本は世界で最も厳格な食品表示ガイドラインを定めており、日本国内で製造または取り扱われるすべての加工食品に対して原産国表示が義務付けられています。
しかし、多くの加工食品は多種多様な原材料から製造されているため、すべての原材料の原産地を特定してラベルに表示することは非常に難しいのが現実です。

そのため、日本の法律では最も配合量が多い原材料の原産地をラベルに表示することを義務付けています。 その他の原材料の原産地については記載することは必ずしも必要ではありませんが、食品メーカーはこれらについても開示することが強く求められています。 鈴木博士は、原産地判別の実例として、パンに使われる小麦粉の地理的起源を辿るために、小麦粉タンパク質の炭素、窒素、酸素の安定同位体比を調べました。 まず、小麦グルテニン画分の同位体比は小麦粉の同位体比と正の相関があることが判りました。 次に、カナダ、アメリカ、日本のそれぞれの小麦粉で作られたパンのサンプルから、小麦グルテニン画分の炭素、窒素、酸素の同位体比を測定したところ、日本の小麦粉で作られたパンの小麦グルテニン画分の炭素と窒素の同位体比は、他の国のものよりも低いことがわかりました。 これらのことから、小麦グルテニン画分のIRMS 分析が、パンに含まれる小麦粉の地理的原起源を辿るための有用な指標となる可能性を示唆したと鈴木博士は考えています。 加工食品は、主原料の他に調味料や調理方法など、混合状態に影響を与える多くの要素があります。 しかし、幸いなことに、安定同位体比は製造工程や添加物の影響を受けにくい特徴があります。 その一方で、複数の原材料を使用して何重にも加工された食品の場合には、同位体比はすべての構成元素の値を反映する可能性があるため、鈴木博士をはじめとする専門家は、より正確な分析結果を得るために、原材料から添加物を事前に抽出する前処理を行っています。

日本は世界で最も厳しい食品表示ガイドラインを定めている国です
純日本産の食品は市場にあまり出回っていないことから
大変高価になると同時に、食品偽装のリスクも高まっています

Japan outlines on blue background

産地表示の信頼性

消費者の嗜好に関する最近の調査* では、回答者の71%が食品の原産地を重要視しており、ほぼ3 分の2 が特に重要だと考えているという結果が示されています。
2020年に導入された欧州連合の新しい規則では、食品メーカーは主要原材料の原産国または産地をラベルで表示することが義務付けられています。
原産地表示は、消費者にさらなる透明性を提供するだけでなく、その食品の価値を生み出す手段でもあります。

*N. Knežević, S. Grbavac & M. Palfi ‘Country of Origin - The Importance for Consumers’ European Food and Feed Law Review Vol. 14, No. 6 (2019).

食品の原産地は、多くの場合、特定の国や地域の料理ノウハウや気候風土のアイデンティティと結びついており、それが食品の特性や消費者の連想に影響を与えます。 例えば、フランスのフィレ・ミニヨン ステーキと日本の和牛のカットは同じではありませんが、こうした原産地の違いを表示によって明確に区別することができます。

Japanese wagyu beef on a wooden board

ヨーロッパのいわゆる原産地呼称保護認証(PDO)は、特定の地理的地域で認められた方法で生産、加工、調理された農産物および食品に適用されます。 同様に、日本には地理的表示(GI)があり、独自の生産方法や気候、土壌条件などの自然特性を持つ地域ブランドを保護することを目的としています。 これらの認証を取得した食品は高値で取引されることが多いため、心無い企業や個人が、偽物を本物と偽り売りつける犯罪が後を絶ちません。 IRMS は、匠の技とも言える技術で作られたこうしたブランド食材の認証を裏付けることで、生産者の事業を支援しています。

分析技術のブレークスルー

食品が何から作られ、どこから来ているのかは、消費者だけでなく、食品業界や研究者にとっても重要です。
だからこそ、信頼できる分析技術とそこから得られる結果が求められます。

「元素分析(EA)と同位体比質量分析(IRMS)を組み合わせたEA-IRMS は、食品の真正性と原産地判定の上で強力なツールとなります」と鈴木博士は言います。 「酸素同位体比は地理的情報を含んでいるため、食品の原産地判定に役立ちます。 ところが、以前は酸素同位体比の信頼できる測定技術がないことが問題でした。 酸素同位体比を測定する場合、有機物を高温で熱分解することによって酸素(O)を一酸化炭素(CO)へ変換し、IRMS で酸素同位体比を測定します。 また、ほとんどすべての生物学的サンプルにはアミノ酸由来の窒素(N2)が含まれており、熱分解中に窒素ガス(N2)へ変換されます。 ところが、N2 とCO のm/z はどちらも28 であるため、N2 とCO のシグナルピークの分離がうまく行われなければCO の酸素同位体比が大きく変わってしまうことから、両ガスの分離を確実に行う必要があります」と鈴木博士は指摘します。 そこで、この課題を克服するために、鈴木博士はエレメンターのEA-IRMS を採用しました。 「質量分析装置IsoPrime100(現行モデル isoprime precisIONの前身)に、前処理装置として元素分析装置 vario PYRO cube®(EA)を組み合わせました。 このEA のパージ&トラップカラムの優れたガス分離能のおかげでN2 とCO が確実に行えるため研究を進める上で大いに役立っています」とコメントしています。

食品分析の存在意義

食品の真正性や原産地よりもさらに重要なのは、消費者にとっての食品の安全性です。

食品の偽造は消費者の健康に影響を及ぼす可能性がありますが、中国で起こった粉ミルクのメラミン汚染や、最近チェコやインドで起こったアルコール飲料へのメタノール混入をめぐるスキャンダルなどでもよく知られています。 このような事件が起こると、消費者は食品の原産地に細心の注意を払い、より高い品質と透明性を求めるようになります。 こうした食品の安全性や信頼性はIRMS だからこそ提供できるものであり、世界中で食品や農産物の偽装や不当表示といった事件がある限り、食品分析とそれを満たす最新のテクノロジーが必要とされ続けます。

 

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