本当に正確だと言い切れますか? その食品の包装に記載されている原産地表示…
ラベルを超えた真実を測る! 食品 産地偽装対策の鍵、IRMSとは?
香りや味だけでは見抜けない偽装食品
IRMS(安定同位体比質量分析)は原材料の同位体サイン「食品の指紋」を解析し、
その食品がどこで、どのように作られたかを科学的に証明します
ブランド価値と消費者信頼を守る“データによる証拠”がここにあります
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食品包装には、その食品の原材料名、アレルギー物質名ならびに栄養成分が表示されています
さらに水のボトルには、固形物や微量元素の含有量まで表示されています
このようにして、私たちは自分が摂取している食品や飲料について知ることができます
ところで、安定同位体を使って食品の産地判別が行えることをご存知でしょうか?
実は食品に含まれる非放射性の同位体、つまり安定同位体の比率を測定することで、その食品の表示が本物なのか、あるいは意図的に不純物が混入されたり産地が大きく異なっているのかを判別できます。
同位体比質量分析法(IRMS)は、さまざまな製品や構成元素のユニークな化学的特徴を決定できることから、私たちが摂取する食品の素性をより詳しく知ることができます。
なぜなら多くの食品は「食品の指紋」とも呼べる特有の同位体フィンガープリントを持っており、類似品と区別することができるからです。
そして、このフィンガープリントをIRMS によって可視化することができます。
生産業者や供給業者が、自分たちに有利になるように食品表示を偽ることを食品偽装と呼びます。同位体比質量分析法は食品偽装の一つである原産地偽装を見破ることができます。

その水はどこから?
さて突然ですが、あなたはその水が本当はどこからきているのか答えられますか?
誰もが知っているように、水は必ず水素と酸素から構成され、地球も含めて宇宙全体で化学的には同じ物質です。
しかしながら、物質的には同一ではあるけれども、その水がどのような環境でどのような過程を経て流れてきたのかを考え始めると非常に興味深い話になります。
IRMS は軽元素同位体に対する重元素同位体の比率、例えば18O/16O を測定することができますが、これは異なる生物学的、化学的、もしくは物理的プロセスの固有の特徴を表します。 例えば海水の場合であれば、赤道付近の海は高緯度の海よりも暖かい、つまり赤道付近ではエネルギーが高いため、重元素の同位体は蒸発し易くなります。 そのため、赤道付近の降水は極地の降水よりも同位体的に重くなります。 なぜなら、極地に比べて相対的に重元素の同位体がより多く蒸発して雨に変わるからです。 そのため、緯度に依存して水の蒸発のメカニズムが異なることで同位体的に軽い水と重い水の比率が変化することから、その水が極地、赤道、またはその間のどこから来たのかが判ります。
つまりIRMS は、その水が本当に熱帯で採れた「職人技」による産物なのか、それとも北欧の水道水からボトル詰・ろ過された水なのかを教えてくれるというわけです。 加えてIRMS は単なる水の分析にとどまることなく、私たちが消費する食品の構成元素の形成に関わる生物地球化学的プロセスについて、特異的な知見をもたらします。 これは科学的な意味だけでなく、私たちが摂る食物や飲料が実際に食品表示ラベルに記載されている通りであるかどうかを知る上でも貴重です。
もうごまかせません
イタリアのパルメザンチーズやボルドーのフランスワインから、イギリスのメルトン・モーブレーのパイやドイツのブラートヴルストまで、原産地名称保護は、消費者に原産地情報を提供するだけでなく、国際的に有名な食品や飲料のブランドの基本要素でもあります。 食品偽装は、世界経済に毎年何十億ドルもの損害を与えています。牛肉に見せかけた馬肉から、偽のエキストラバージンオ
リーブオイルまで、消費者の信頼を損ない、人々に金銭的損害を与える悪質な行為に関するニュースは後を絶ちません。 それに立ち向かうため、IRMS はブランド食品の原産地を科学的に証明し、信頼できる食品原材料をサプライチェーンが供給していることを保証する貴重なツールです。
高級食品は最も詐欺の危険にさらされています。
Mike Seed

実は、食品偽装の多くは消費者を欺く経済的インセンティブが高い高級食材に関連しています。
例えば、トリュフの風味プロファイル自体は実験室で作成することができますが、ブラインド テイスティングによって本物のトリュフと合成のトリュフを区別することはできません。 そこでIRMSを用いることで、今食べているトリュフが農家とそのトリュフ犬によって発見されたものなのか、それとも試験管で作られたものなのかを正確に判別することができます。
つまりIRMSは、詐欺師が違法に消費者を騙して利益を得ることを阻止できる唯一の手段なのです。
ブランド保護に向けて
近年、大量生産された食品よりもオーガニックで持続可能な食品へと消費者の嗜好に変化が見られる中、IRMSは生産者と消費者の双方を支援する貴重な存在です。
ナチュラルで高品質なプロセスで作られた食品は保護されるべきものであり、多くの場合、何世代にもわたって生産者が積み
重ねてきた努力はその恩恵を受けるに値します。 とはいえ、時には数十種類もの原材料を使用する食品に、全面的にIRMS分析を適用することは必ずしも容易ではありません。 事実、日本では食品表示にすべての原材料の原産地を記載することが議論されています。 例えば、カナダ産小麦を使って日本で製造されたパンの場合、その原産地を明記し、それを検査して証明する必要があるということになります。 実際には課題が残されているものの、IRMSは食品の透明性と安全性の向上に貢献できる分析方法ということは確かだと言えます。
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