そもそも「オーガニック」とは? 同位体比質量分析法によるオーガニック真偽判別
ラベルだけでは語れない、“本物のオーガニック” を科学する
消費者の多くが“オーガニック”という言葉に"健康"や"安心"を感じる一方で、その真偽のがどう確かめられるのか・・・
実は依然として課題です
今、同位体比質量分析(IRMS)という科学的手法が、"オーガニック"というラベルの向こう側にある「本当の生産背景」を可視化し、
食品ブランドの信頼を支える技術として注目されています
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私たちが「オーガニック」という言葉を聞いて連想するのは、通常、自然栽培で収穫量が少なく、健康効果が高い果物や野菜などの食品です。
そのため、「オーガニック」と表示された食品は高価になる一方で、消費者の満足度にアピールすることができます。
「オーガニック」とは本来どういったものなのでしょうか?
多くの場合、それは法的な認証や説明であると同時に感情に訴えかける用語でもあります。
しかし、「オーガニック」と書かれてキラキラとしたラベルが貼られた食品と、
一見、工業的な方法で生産されたように見える食品との違いを、どのようにして見分けることができるのでしょうか?
何をもってその食品を「オーガニック」と呼べるのか、そしてどうすればそのラベルを信用できるのでしょうか?
オーガニック真偽判別
その答えは、安定同位体比質量分析法(IRMS)と浙江省農業科学院(ZAAS)のYuan Yu-wei教授の研究から導き出すことができます。
同教授は、安定同位体とミネラル元素の分析を農産物とその地理的期起源の同定に使用します。 Yuan 教授によれば、オーガニック食品は一連の基準に従って生産され、検査と認証に合格する必要があります。 そして、残留農薬、重金属、その他の指標が要件を満たした上で原材料自体がオーガニックであることが絶対条件です。 現状、オーガニックの基準は各国で異なりますが、有機農業の普及に努めてきた国際NGO である国際有機農業運動連盟(IFOAM)は、有機農業の発展を目指して1つの基準を示しています。
"オーガニック認証ラベルが貼られた食品が本物とは限らない
Yuan Yu-wei教授

なぜ 「オーガニック」?
そもそもなぜオーガニックにこだわるのでしょうか?
Yuan 教授の答えは 「個人的には、消費者は人間と自然の調和的共存、グリーンな発展を促進するというコンセプトの下、有機農産物の購入を推奨します。 また多くの場合、一般的な農産物に比べて健康的で、品質、栄養価、そして安全性も高いことから、消費者はもっと有機農産物にお金を使うべきだとも思います。 さらに、環境汚染や二酸化炭素の排出削減のためにも、生産者が有機食品を作ることを奨励します」 と明確です。
このような考えはYuan 教授に限ったものではありません。 公共の科学図書館と呼ばれるプロジェクト"Public Library of Science" が2021年に行った調査で、消費者にオーガニック食品を購入する理由を尋ねたところ、主な理由としてあげられたのは「健康的(48%)」、「無農薬(19%)」、「環境に優しい(15%)」という3 点でした。 また、科学ジャーナル「Agriculture」に掲載された別の研究では、「オーガニック」と表示された食品に対する消費者の信頼度は高く、サステナブルな未来への貢献というイメージを持っていると結論付けています。 矛盾しているように思えるかもしれませんが、「オーガニック」のビジネス規模はとても大きなものです。
ヨーロッパの人々は2019 年に実に450 億ユーロ以上をオーガニック食品に費やしており、この数字は今も着実に伸びています。 そして、IRMS は、「オーガニック」というラベルに隠された真偽を浮き彫りにすることで、消費者からの信頼だけでなく、食品産業や食品ブランドの利益を守ることにも役立っています。
暴かれる偽装
Yuan 教授は、オーガニック認証のラベルが貼られた食品が本物とは限らないと指摘します。
そしてIRMS によってその真偽を明らかにすることができると言います。
例えば、「δ13C 分析によってハチミツの偽装に使われているコーンシロップなどC4 糖の供給元を探り当てることができます。 また、δ15N は有機肥料の供給源を示す指標として利用できます。 さらに、炭素、窒素、硫黄、水素、酸素の同位体により、ヨーロッパ産のワインやオリーブオイル、中国産のお茶、韓国産の高麗人参、ニュージーランド産のハチミツなど、農産物の原産地を特定することも可能です」などが、その事例です。 Yuan教授のチームは、Elementarの EA-IRMS 技術を使用して、食品の安全性、地理的起源、成分、そしてオーガニック判定の研究を行っています。 同教授は「過去20 年間で、オーガニック食品の識別技術のレベルは、δ15N単体や複数の同位体による同定において大きく向上しました。例えば、他の指標と比較してδ15N値の威力は明らかで、有機肥料の使用量の増加に伴うδ15Nの増加を検出できます」と述べています。 その一方で、Yuan 教授は「有機肥料と化学肥料を同時に使用した場合に、有機肥料単独の場合と同位体値が一致することがある」と指摘します。 そのため「処理方法、肥料、光や温度など同位体比に影響を与えるさまざまな因子に注目しています。 例えば、有機肥料や化学肥料がδ15N に与える影響や、光や温度がCNSOH の各同位体に与える影響などです」とコメントしています。
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