コメ収穫量大幅アップへの挑戦!
“なぜ穫れないのか” をデータで可視化する──西アフリカの稲作改革
西アフリカ11カ国・1305圃場におよぶ大規模調査で明らかになったのは、炭素と窒素のデータが“見えない差”を生んでいたという事実でした。
短時間で肥沃度を数値化するElementarの元素分析装置が、精密な農法設計と収量最適化を可能にしています。
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前回の記事 土壌分析で穀物収穫量の最適化?では、Justus Liebig University Giessen の Bernd Honermeier教授とその学生たちが、トウモロコシ、小麦、大麦の例を中心に、穀物のあらゆる側面についてどのように研究を進めているかに焦点を当てました。
アジアやアフリカでは、コメは主食のひとつです。Abibou Niangは、西アフリカの稲作における収穫量格差について調査を行っていました。彼の目的は、作物の収穫量を増やす方法を探ることでしたが、気候変動や病害虫の脅威といった課題に直面したことからも、やはり耕作はより資源効率的で持続可能なものにする必要があります。

研究プロジェクト
コメは西アフリカの主食ですが、生産量が需要を大きく下回る問題があります。
農家の収穫量は少なく、気候帯によって大きく変動するのが現状です。 そこでAbibou Niangは、この変動を小さくする方法を見つけたいと考え、大規模な研究チームに参加して西アフリカの主要な3つの稲作システムにおける収穫量変動の調査を行うことにしました。
まず、Abibou Niangはこの変動を引き起こす関連因子を発見するために農家の農法に注目して、研究に参加した各国の国立農業研究所と密接に共同して大規模調査を実施しました。 2012年から2014年にかけて、この研究チームによって西アフリカ11カ国の1,305の圃場で、収穫量、気候、土壌、農法に関する包括的なデータの収集と分析が行われました。
ちなみに、このプロジェクトでは、重要な土壌パラメータである炭素と窒素の含有量を極短時間で測定できるエレメンターの元素分析装置 vario MAX ( vario MAX cubeの前世代機 ) が使用されています。 Abibou Niang は、「この分析装置は危険な化学物質を一切使用せず、短時間で分析結果が得られることから、土壌の潜在的な肥沃度を評価するための重要なデータに容易に辿り着くことができ、直ちに新しい作付シナリオの分析に反映することができました」と当時を振り返ります。
2012年から2014 年にかけて、Abibou Niangとそのチームは西アフリカ11カ国の1,305の畑で
↓ 収穫量、気候、土壌、農法に関する包括的なデータの収集・分析を行いました ↓
また、新たに開発された稲の品種は、アジアの高収穫量品種とアフリカの病害に強い品種を交配して生まれたものです

コメの収量増加の可能性
この一連の調査から、既存の収穫量と潜在的な収穫量の間に27 ~ 51%の差を示したケースが見つかりました。
この差の原因は、灌漑農業においては、雑草、窒素肥料の施用および栽培方法によるものでしたが、一方、天水農業では稲の品種、圃場の水文学、成熟期における雑草の蔓延によるものでした。
これらの結果から、農家が各種障害を認識して取り除く工夫を行うことで、コメの収穫量を大きく増加できる可能があることが示されました。
また、土壌分析だけではなく、稲自体の特性にも焦点を当てた結果、悪条件下でも高収穫量が実現できる稲を開発・改良することができました。 その一例として、アジアの高収穫量品種とアフリカの病害に強い品種を交配させることで、新たに開発された稲の品種があげられます。
これらの一連の研究成果は、精密な分析とそれに基づく農法を実践することで、地球に残された耕地を持続可能性と収益性を併せ持つ形へ生まれ変わらせる期待をもたらします。
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次号へ続く
次号では、1998年から2021年までJustus Liebig University Giessen で作物生産学科長を務めたBernd Honermeier教授にインタビューします。
Bernd Honermeier教授の経験に基づき、より高い収量を可能にする他の方法を紹介します。
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この記事の続きは 高収穫量を可能にする方法:Bernd Honermeier教授インタビューです。
ぜひご覧ください。
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