土壌分析で穀物収穫量の最適化?
“どうすれば収穫量を増やせるか?” その答えは、土壌中の元素バランスにあり
ドイツ Justus Liebig University Giessen の Honermeier教授らの継続的な圃場試験から、
土壌中の炭素(C)と窒素(N)の含有量が、長期的な作物収量と肥料効率に極めて重要であることが証明されました。
この研究では、元素分析装置を用いることで、土壌やバイオマス中の栄養素の除去量を短時間で正確に測定しています。
この科学的データこそが、輪作における最適な栄養バランスと、施肥方法の効率を評価するための最も確実な根拠となります。
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前回の記事 「土壌の役割とは」 では、耕地の炭素含有量が肥沃度に与える影響について詳しく見てきました。
1998 年から2020 年まで、Justus Liebig University Giessen で作物生産学科長を務めたBernd Honermeier教授の研究チームは、
継続的な圃場試験で、異なる肥料や耕作形態の使用が土壌の炭素含有量・長期的な作物収量に与える影響を研究しました。
Honermeier教授によれば、土壌を激しくほぐしたり撹拌させる従来の耕作方法では水の損失が大きくなります。
その一方で、マルチングにより土壌撹拌の頻度を減らして年間を通して植物性残渣量を増やすことで、
酸素や水の土壌への浸透や土壌浸食を最小限に抑えられる保全農業の実践により、
適切な水分バランスを維持することができると同教授は考えています。
土壌サンプルの元素分析
Honermeier教授の研究チームは、元素分析を用いて土壌や穀物由来のバイオマスに含まれる炭素や窒素の含有量を測定しています。 この分析によって得られたバイオマス中の窒素値に基づく換算係数は、植物の窒素除去量(例えば収穫による)と種子の粗タンパク質含有量の両方を計算するために用いることができます。 このデータ、特に栄養素の除去量は、輪作における栄養バランスの前提条件であり、施肥方法の効率を評価するために必要となります。 元素分析であれば、非常に多くのサンプル数を短時間で処理、分析、およびデータ評価を行うことが可能です。 また、元素分析は土壌中の全炭素、有機体炭素(Corg)、そして窒素の各含有量を決定できることから、輪作・耕作・施肥といった管理工程それぞれにおける土壌の炭素・窒素貯留能を評価することが可能になります。
↓ 2016年度 ドイツ国内の農業用地内訳・主要作物 ↓
*出典: ドイツ連邦食料農業省/連邦統計局

研究プロジェクト
Justus Liebig University Biessen(JLU)は、最も古いところでは1954年に作られた農地を利用して、複数の永続的な農場試験を実施しています。 トウモロコシ、冬小麦、春大麦が3年輪作で栽培されており、施肥方法はそれぞれ異なります。 定期的な土壌サンプリングにより、無機窒素、リン、カリウムの施肥(NPK施肥)と厩肥の併用が、土壌と収穫量へ及ぼす長期的な影響を調査しています。
↓ 国際有機窒素施肥試験 ↓
Rauischholzhausen (JLU Giessen)

特に、次の2 つの要因が土壌中の炭素貯留に対してプラスの効果を与えます。1つは、藁や堆肥を使った定期的な有機肥料施肥。 もう1つは、夏期収獲作物の定期的な栽培です。 これらはHonermeier 教授のチームの研究者によって野外実験中に行われた観察の結果です。 また、彼らは窒素・リン・カリウムの混合施肥と通常の有機肥料の組み合わせが、収穫量が最も多くかつ安定することを発見しました。 特に窒素は、植物の成長・食糧生産に影響を及ぼす最も重要な栄養と言えます。
この実験結果は、耕地における効果的で収穫量を増やす方法に関するヒントをもたらします。 さらに、Honermeier教授がインタビューの中で述べているように、植物育種や精密農業の分野で収穫量を最適化するための方法は他にも考えられます。
そしてこの研究は他の場所でも続きます...
Honermeier 教授の研究チームが穀物全般に関する研究をGiessen で行っていたのと同じ頃、Abibou Niang は、所属するRhenish Friedrich Wilhelm University Bonn農学研究科の博士号論文研究の一環として、西アフリカの稲作における収穫量格差について調査を行っていました。 彼の目的は、作物の収穫量を増やす方法を探ることでしたが、気候変動や病害虫の脅威といった課題に直面したことからも、やはり耕作はより資源効率的で持続可能なものにする必要があります。
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次号へ続く
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この記事の続きは 【近日公開】コメ収穫量大幅アップへの挑戦 です。
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